『命と向き合うデザイン』 

 心臓


心臓とは血液を送り出すポンプの役割を担う内臓器官です.その機能疾患による影響力が大きいことから,個体における重要性は脳と共によく知られています.また,活動の様子は触診によっても容易に確認でき,特に緊張などによる心拍数の増加が発生すると顕著になります.このように精神的な状態とも非常に関係性が強い臓器の一つです.ヒトの心臓は発生学の視点から見ると静脈の一種が変化したものと考えられており,2本の血管のみで構成されている非常に単純な構造をしています.心臓の役割の一つである血流生成は体内の全て器官へ血管を通して血液を送り込むことを目的としており,人体は運ばれてきた血液中の成分に含まれる酸素と栄養分を元に,成長・生成を行っています.血液量は個人差はあるが成人男性で平均5リットル程度であり,約50秒を掛けて体内を一周します.また,成人の血管長はおよそ100,000kmと言われており,毛細血管の分岐を考慮すればその全てが一直線に接続しているわけではありませんが,それでも50秒という時間で一周するためには相応の速度が必要です.血流を生み出すために心臓は拍動をしています.拍動は収縮期と拡張期を繰り返すことによって生まれます.収縮期には,心室内の血流が一気に動脈に送り出されこのときに血流が生まれます.そして同時に,心房内には静脈から血液が流入します.次の拡張期には,心房から心室内に血液が流入し,収縮に備えます.この時,動脈に送り出される血流の圧力を一般に血圧と言い,収縮期の血圧を最高血圧,拡張期の血圧を最低血圧と言います.人間の一生を80年とし,平均的な脈拍を70回/分とすると,心臓は一生のうちに約30億回,拍動することになります.工業製品として考えれば,現実的な数字とは言えず,品質保証することは極めて困難な回数です.また,当然,基本的にメンテナンスを行うことは困難であるため,外的な保守は行わずに運用し続けることになります.容易にできる対処療法としては薬物による内的な保守のみです.

・南淵 明宏, 心臓は語る, PHP研究所
・小柳 仁, 心臓にいい話, 新潮社
・磯村 正, 治せない心臓はない, 講談社
・長山 雅俊, 心臓が危ない, 祥伝社
・東嶋 和子, よみがえる心臓―人工臓器と再生医療, オーム社
・日本人工臓器学会, 人工臓器は、いま―暮らしのなかにある最先端医療の姿, はる書房

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