2010年7月20日火曜日

『命と向き合うデザイン』 

 産業革命とdesign−1



産業革命を近代デザインの起源であるとする論があります.デザインの起源をどこに設定するかは諸説あり,デザイン対象によって変わる場合もあります.例えば,ヒトまたは動物が道具を使用した時からデザインはあったという説もあります.しかし,この場合は,道具をつくり出す行為が営為行為にはなっておらず,目の前にある問題を解決するための手段としてのみ行われています.では,営為を目的としてモノをつくることが一般化したのはいつか,ということが問題になります.そこで,ここでは産業革命をその起源として考えてみます.
産業革命とは,19世紀のイギリスから始まった,技術革新による産業・経済・社会構造の一連の変革を指す言葉です.技術の革新によって従来の手工業から機械工業へと変化した産業基盤によって,それまでに蓄積されていた資本を使い,農村で溢れた労働者を都市に引き入れました.結果として,主となっていた綿織物工業を中心に,それに関係する製造業・搬送業などあらゆる産業へ革新は波及しました.労働者階級人口が爆発的に増加し,産業資本家に次ぐ勢力となったため,経済・社会構造にまで変革が生まれました.やがて第1回ロンドン万国博覧会(1851年)を迎え,当時の先進国の多くに産業革命の波が押し寄せることになります.ここで着目すべきは,手工業から機械工業へと変化した,という技術的な部分です.製造の視点に立つと,産業革命以前の商品は職人の手によって一つ一つつくられていました.言い換えれば,職人がつくることができるということが商品の成立条件でした.しかし、産業革命以降は,機械によって一度に大量に製造できることが条件となります.この移行は当初は速やかにいかず,品質の悪い粗悪な商品が出回ることになりました.しかも,製造機の改良が進み品質が向上すると,今度は逆に,産業資本家が利潤を追い求めるために生産コストを下げ,安く質の悪い商品が大量に生産されることになったのです.また,労働条件の悪化に起因するヒューマンエラーによる品質低下も重なりました.

・アルビン・トフラー, 第三の波, 中公文庫 M 178-3, 中央公論新社
・ニコラス ペヴスナー, モダン・デザインの展開―モリスからグロピウスまで, みすず書房
・柏木 博, デザインの20世紀, NHKブックス, 日本放送出版協会