『命と向き合うデザイン』 

 産業革命とdesign−2


大量生産による品質の低下を憂いた一部の人々が,手によるモノづくりの復興活動を開始します.それはアーツ・アンド・クラフツ運動と呼ばれ,活動時期は19世紀の後半から20世紀の初頭まででしたが,この活動が国際的に様々な活動を誘発することになります.中でも,フランスのパリを発祥とするアール・ヌーヴォーは1890年のパリ万国博覧会を切っ掛けに世界中に広まりました.手づくりを重要視しながらも,鉄やガラスといった当時の新素材の可能性を検討し,それぞれのデザイナーが新しい表現方法を模索しました.万国博覧会と並んで,写真の技術が一般化したことも,国際的な規模で活動が浸透した大きな理由の一つです.さらに時代が進むと,機械工業による安価な大量生産と,手づくりによる少量ですが丁寧な生産との,両方を重視する考え方が広がります.中でも,アーツ・アンド・クラフツ運動の思想を受け継ぎつつ,後のバウハウスへとつながるドイツ工作連盟は「大量生産するためのモノの規格化・標準化」という考えを強く推しだし,芸術と産業の統一という構想を持っていました.また,一方ロシアでは,ロシア・アヴァンギャルドが起こり,デザインと政治のつながりが明確になります.それはつまり,モノのデザインは生活様式・文化全体の変革へとつながり,結果的に政治・経済・社会全体に関わる,ということを初めて国家として意識した活動でした.プロパガンダ・アートと呼ばれるように,政治にも積極的にデザインが取り入れられました.製造面で意識されていたことは「使用と生産の両面から見た合理性」として標準化が強く押し出されます.そして一連の流れの一つの区切りとしてここでバウハウスが設立されます.

・アルビン・トフラー, 第三の波, 中公文庫 M 178-3, 中央公論新社
・ニコラス ペヴスナー, モダン・デザインの展開―モリスからグロピウスまで, みすず書房
・柏木 博, デザインの20世紀, NHKブックス, 日本放送出版協会

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