2010年8月30日月曜日

『命と向き合うデザイン』 

 新・再生医学について−9



多くの可能性を持った再生医療ですが、問題点も散見されます。対象とする領域が広いため、各器官ごとに発生している問題もありますが、再生医療として俯瞰した場合の問題点は主に次の5つに主に分類されると考えられます。安全性・効率性・実用性・有効性・ 倫理性の5つです。まず、安全性と効率性について言及します。
安全性とは奇形腫の形成や免疫拒絶といった細胞−細胞間、細胞−生体間に発生する生物学的な事象に関する問題です。特に奇形腫に関してはES細胞において残存未分化幹細胞が惹起する問題です。また、自己由来以外の細胞を用いる場合は、免疫抑制剤がほぼ確実に必要になることからも免疫系とも関係性は細胞が定着するまで懸念事項として残ります。
効率性とは、固体による細胞培養の差異によるものと、培養に必要な時間の問題があります。固体差異は例えば単位時間培養しても平均的な培養量が得られないなどの問題があります。その場合、患者から再び細胞を採取し、培養し直す必要が生じます。また、後者は治療目的ごとに必要な細胞量は異なりますが、いずれにしても細胞を培養するにはある一定時間が必要になるということです。これは前者の固体差異にも関係しますが経験値的な数字はすでにまとめられています。この時間はそのまま治療開始日時に影響を与えるため、今後再生医療の需要が増えるに伴い深刻化することは明らかです。また、もう一点、効率性に含まれるものに同疾患の回避があります。現在治療の対象のなっているものの中に遺伝性のものがあれば、自己由来の細胞を用いては完治が難しい可能性があります。その検証はまだ行われていません。

・中辻憲夫, 中内啓光: 再生医療の最前線2010, 羊土社, 2010
・立石哲也, 田中順三: 図解 再生医療工学, 工業調査会, 2004
・阿形清和他: 再生医療生物学, 現代生物化学入門7, 岩波書店, 2009
・筏義人: 患者のための再生医療, 米田出版, 2006
・筏義人: 再生医工学, 化学同人, 2001
・田畑 泰彦: 再生医療のためのバイオマテリアル, コロナ社, 2006