『命と向き合うデザイン』 

 新・細胞シート工学−5


虚血性心筋症とは、心筋への血液の供給が低下または途絶するために発生する症状であり、狭心症や心筋梗塞と呼ばれる疾患も虚血性心筋症の一種です。心筋へ血液を供給できるのは、冠状動脈だけであり、冠状動脈には側副血行路がないため、一本の血管が狭窄または閉塞し、血流量が不足したり完全に途絶えてしまった場合、閉塞部より先への酸素や養分の供給が不可能になります。狭窄や閉塞が発生する原因は完全には解明されていませんが、主に、血管内に血液が付着し硬化したものが血栓として血流を妨げるか、または3層でつくられている血管壁のうち、内側から1層目と2層目の間にプラークと呼ばれる脂肪の塊が生じ、これが血管の内側にせり出してくるかたちで閉塞が起こる場合があります。後者の場合、血管壁が徐々に内側にせり出してくることで狭窄が発生する場合と、血管内壁が決壊しプラークが血管内に露出することで途絶する場合とがあると言われています。いずれにしても、血管が完全にふさがる前であれば、血管拡張用の心臓カテーテルを用いて血管内の血栓等の除去、およびステントによる血行路確保や、大動脈から血栓箇所を越えて直接先端の冠状動脈へと血管をつなぐバイパス術と呼ばれる治療で血流を確保し、血行を回復することができます。治療が間に合えば、心筋自体の回復が見込めますが、完全に途絶し、一定時間が経過した場合、心筋は壊死してしまい回復できません。細胞はその種類によって、分裂できる回数が決められています。心筋細胞はこれまで一度死滅した場合、二度と増殖することはできないと考えられて来ました。

・Richardson P, McKenna W, Bristow M, et al.: Report of the 1995 World Health Organization/International Society and Federation of Cardiology task force on the definition and classification of cardiomyopathies. Circulation 1996, 93: 841-842.
・厚生労働省大臣官房統計情報部, 平成19年 人口動態統計月報年計(概数)の概況, 厚生労働省
・Memon IA, Sawa Y, Fukushima N, et al: Repair of impaired myocardium by means of implantation of engineered autologous myoblast sheets. J Thorac Cardiovasc Surg Nov 130(5): 1333-41, 2005

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