『命と向き合うデザイン』 

 新・細胞シート工学−6


細胞シートによる心疾患の治療方法を示すために、まず心臓の機能と構造について簡単に説明します。心臓とは血液を送り出すポンプの役割を担う内臓器官です。心臓の機能が疾患を得ると、生体に対する甚大な影響が出ます。その影響力の大きさから脳と共に重要性がよく知られている器官の一つです。また、活動の様子は触診によっても容易に確認でき、特に緊張などによる心拍数の増加は発生後すぐに体感できます。このように精神状態とも非常に関係性が強い臓器の一つであると言えます。本節では主に本論の最終的な治療対象であるヒトの心臓について概説します。ヒトの心臓は発生学の視点から見ると、静脈の一種が変化したものと考えられており、2本の血管のみで構成されている非常に単純な構造をしています。心臓の役割の一つである血流生成は、体内の全て器官へ血管を通して血液を送り込むことを目的としています。身体を構成している細胞は運ばれてきた血液中の成分に含まれる酸素と栄養分を元に、成長・生成を行っています。血液量は個人差はありますが、成人男性で平均5リットル程度であり、約50秒で体内を一周します。また、成人の血管長はおよそ100,000kmと言われており、毛細血管の分岐を考慮すればその全てが一直線に接続しているわけではありませんが、約50秒という時間で一周するためには相応の速度が必要であることが容易に想像できます。

・南淵 明宏, 心臓は語る, PHP研究所
・小柳 仁, 心臓にいい話, 新潮社
・磯村 正, 治せない心臓はない, 講談社
・長山 雅俊, 心臓が危ない, 祥伝社
・東嶋 和子, よみがえる心臓―人工臓器と再生医療, オーム社
・日本人工臓器学会, 人工臓器は,いま―暮らしのなかにある最先端医療の姿, はる書房

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