『命と向き合うデザイン』 

 新・人工心臓−6


人工心臓は主に次の5つの要素で構成されています。1)ポンプ部、2)動力部、3)制御部、4)電池部、5)検知部の5つです。人工心臓はこれらの要素を、体内または体外に設置することで人工的な循環器としての機能を発現させることができます。例えば、国立循環器病センターと東洋紡績社によって開発された「国立循環器病センター型(日本で1990年に厚生労働省認可を受け、1994年から急性心不全の治療として公的保険が適用)」では、ポンプ部を含むすべての要素が体外に設置されます。そのため機器の整備は比較的容易に行えますが、患者が移動する際にはすべての機器を同行させなければなりません。この場合、現実的には一人での移動は困難なため、看護師や家族の介助が必要となります。現在日本国内で公的保険が適用されている補助人工心臓はこの国立循環器病センター型のみです。このように、体表を貫通する管が一本以上必要になると感染症の発生率が上がります。特に、国立循環器病センター型のようにポンプが体外に設置される場合、患者自身の心臓から血液を抜き取るための脱血管(インフロー・カニューラ)や人工心臓から再び心臓に血液を送り込むための送血管(アウトフロー・グラフト)が体表を貫通することになります。これらはそれぞれ太さが2〜3㎝と太く、人体への負担は少なくありません。

・南淵 明宏, 心臓は語る, PHP研究所
・小柳 仁, 心臓にいい話, 新潮社
・磯村 正, 治せない心臓はない, 講談社
・長山 雅俊, 心臓が危ない, 祥伝社
・桜井靖久: 医用工学MEの基礎と応用, 共立出版, 1980

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