2010年9月24日金曜日

『命と向き合うデザイン』 

 新・人工心臓−10





この内、人工心臓に最も影響を与えるのは血栓形成の問題です。血栓は血流に停滞箇所が発生するとその付近で形成されます。血栓そのものが人工心臓内において機器動作の妨げになることも問題ですが、それ以上に形成された血栓が血管を通過し、脳等、他の臓器の毛細血管内に塞栓をつくる方が問題としては甚大です。生体の防護機構が誘起される原因は主に人工物の表面上にタンパク質吸着層が生成され、血球成分などの細胞が付着するためと考えられています。そのため、人工心臓内の表面素材の改良に関する研究が続けられています。次に感染症に関しては体表に開けられた孔によるところが大きいです。これに対して、現在は2つの視点から研究が進められています。1つは孔の周辺のシール方法として、新しい素材の研究が進められており、もう1つは、孔を用いずにすべての要素を体内に納めるか、または経皮的に体外から必要な要素を送り込む方法の研究です。具体的には電力供給が挙げられます。心臓は1日24時間何十年という期間に渡って動作を続けなければいけません。その際に一番問題になるのは電池部の寿命です。現在、一般的な製品に用いられているリチウム−イオンなどの電池をいくら体内に保有できたとしても賄いきれる量ではありません。そこで、経皮的に体内電池に充電する方法が研究されています。具体的には体外・表皮コイルを使って、体内にある二次コイルに電磁誘導で充電する方法があります。電池も体内に埋め込むためには原子力バッテリーの実用化が望まれます。小型のものでも80年程度の運用に適応できると考えられています。

・南淵 明宏, 心臓は語る, PHP研究所
・小柳 仁, 心臓にいい話, 新潮社
・磯村 正, 治せない心臓はない, 講談社
・長山 雅俊, 心臓が危ない, 祥伝社
・桜井靖久: 医用工学MEの基礎と応用, 共立出版, 1980