2010年9月25日土曜日

『命と向き合うデザイン』 

 新・人工心臓−11



人工心臓側の問題としては、まず耐久性が挙げられます。これは電力供給でも述べたように、一般的には何十年も連続使用するような製品は存在しません。しかし、人工心臓は当然胸腔内に収まってしまうため容易に取り出すことができません。つまり、機器のメンテナンスを行うことも容易ではなく、一度動き出してしまえば二度と簡単には取り出すことができないものです。そもそも、メンテナンスが必要であるという時点で、人工心臓としては問題であり、患者の生体を危険にさらさないためには、何十年という期間を想定した安全設計が保証されなければなりません。動作する機器における耐久性という点から工学的に考える場合、摩擦による問題が最も大きいと言えます。特に現在主流になっている連続流型と呼ばれるポンプは、回転機構で実現されているものが多く、それらの多くは回転軸が必要なものです。さまざまな解決策が講じられており、例えば、血流が入る空間とインペラを回す空間をシールするための素材などが研究されています。この問題に対して、インペラを磁気の力で浮上させることで解決しているDuraHeartは、大変優れていると言えます。他にも、生体の防護機構である排除反応などによって、人工心臓周囲に癒着が精製され、機能に影響を与えることもあります。これらも素材の耐久性として検討しなければなりません。最後に熱の問題です。摩擦などによる想定外の熱が体内で発生した場合、体内を密閉空間ととらえると熱が保存されることが一番の問題です。熱の逃げ場がない状態で、ある一点から集中的に熱が発生する場合、生体側では熱傷が生じ、人工心臓自体は筐体が熱によって破損することがあります。この問題に対して川崎が出した一つの解答は、肺動脈を、人工心臓の中でも最も熱が発生しやすい動力部に巻き付けることで、機器内部で発生した熱を肺に送る込む方法です。肺では血管は微細な毛細血管に分かれ、それぞれが肺胞を通じて外気に触れます。肺胞の膨大な面積を使って外気と体内の熱を交換し、再び冷たい血液を人工心臓に送り込むという方法です。現在、発生した熱を有効に外部に逃がす方法はこれ以外に報告されていません。

・南淵 明宏, 心臓は語る, PHP研究所
・小柳 仁, 心臓にいい話, 新潮社
・磯村 正, 治せない心臓はない, 講談社
・長山 雅俊, 心臓が危ない, 祥伝社
・桜井靖久: 医用工学MEの基礎と応用, 共立出版, 1980